ニッポンの10年はただ同じことの繰り返し。ただし、悪くなっていることにみんな気がついてない。(小田嶋隆×武田砂鉄【前編】)
■9年前から「大阪と抗争」してきた自負
2011年7月11日
おおさかとこうそう→「大阪と抗争」:つきものだよね。「奈良と大仏」みたいな意味で。→「大阪渡航層」:外国から大阪にやってきた人々、または大阪から海外流出する層が、あの街の命運を握っているというお話。→「大阪解こう嘘を」:橋下さんの真の狙いを見極めるべきだということでしょうか。
(『災間の唄』p.28より)
武田「これは2011年のツイートなんですが、今日、まさに2度目の住民投票が行われていますね」(※ちなみにこの日の深夜、都構想は否決された)
小田嶋「これは予言的ですよね「大阪と抗争」っていうね」
武田「今回選んでいて、これぞ、『ザ・小田嶋隆ツイート』という気がしたんです。時間をかけて考えられた感じがする。語呂合わせ的な遊びでありながら、今起きている事象が掛け合わされている」
小田嶋「これはまず「おおさかとこうそう」とひらがなで紙に書いて、そこに漢字を当てはめてみたり、大阪に関連する言葉をマトリックス的に書いたものから拾い上げてくるようにしているんですよ」
武田「まず語呂を合わせてから、関係する事実を当てはめていくような流れなんですか?」
小田嶋「そう、語呂ができたあとに、それをストーリーとして繋がるように仕上げていくんです」
武田「そうやって考えていくと、上手くいかない可能性もありますよね」
小田嶋「もうひとつのところで決まらないことはたくさんありますよ。だからこれはよくできた方」
武田「おおさかとこうそう、ってひらがなで書いて、3パターン出てきたわけですからね。それが出てきたときは、もう嬉しくてニヤニヤしているわけですか」
小田嶋「「大阪解こう嘘を」なんて、出たときは嬉しいですよ(笑)。さらに、本には入ってないんですがここからの派生で、「とこうそう まんなかへんに うそがあり」っていう川柳を作ったりもしている。「とくそうぶ まんなかへんに くそがあり」とかね」
武田「本当に、小学生時代からやってることが変わってない」
小田嶋「こういうのができると、その日は一日中、嬉しいんだよね」
(小田嶋隆×武田砂鉄『災間の唄』特別対談【後編】につづく)
小田嶋隆(おだじま・たかし)
1956年東京赤羽生まれ。早稲田大学卒業。一年足らずの食品メーカー営業マンを経て、テクニカルライターの草分けとなる。国内では稀有となったコラムニストの一人。著書に『小田嶋隆のコラム道』『上を向いてアルコール』『小田嶋隆のコラムの切り口』(以上、ミシマ社)、『ポエムに万歳!』(新潮文庫)、『地雷を踏む勇気』(技術評論社)、『ザ、コラム』(晶文社)、『友達リクエストが来ない午後』(太田出版)、『ア・ピース・オブ・警句』『超・反知性主義入門』(以上、日経BP)、『日本語を、取り戻す。』(亜紀書房)など多数。
武田砂鉄 (たけだ・さてつ)
1982年、東京都生まれ。出版社勤務を経て、2014年からフリーライターに。著書に『紋切型社会―言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、2015年、第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞、2019年に新潮社で文庫化)、『芸能人寛容論―テレビの中のわだかまり』(青弓社、2016年)、『コンプレックス文化論』(文藝春秋、2017年)、『日本の気配』(晶文社、2018年)、『わかりやすさの罪』(朝日新聞出版、2020年)などがある。新聞への寄稿や、週刊誌、文芸誌、ファッション誌など幅広いメディアでの連載を多数執筆するほか、ラジオ番組のパーソナリティとしても活躍している。